身内を亡くしてまだ日が浅いのに、何か月も前に取ったライブのチケットが手元に残っている。
楽しみにしていた気持ちは本物なのに、行くと言えば薄情に見えそうで、行かないと決めるにはもったいない。
そんなふうに、どちらを選んでも落ち着かない人は少なくありません。
結論からお伝えすると、喪中や忌中にライブへ行ってはいけないという決まりはありません。
ただ、亡くなってからの日数や、誰が亡くなったのかによって、周りの受け止め方も自分の気持ちも大きく変わります。
行くことを勧める記事でも、控えることを勧める記事でもありません。
自分で決めるための材料を順番に並べています。
この記事は、e-Gov法令検索に掲載されている人事院規則と法律の条文、チケット販売会社の公式ページ、葬儀社各社の公式サイトをもとに整理しています。
まずは、喪中と忌中がそれぞれ何を指しているのかから見ていきましょう。
喪中にライブへ行ってもいい?決まりはないが忌中は控える人が多い
最初に、喪中と忌中という2つの言葉の違いを押さえておきます。
喪中や忌中にライブへ行くことを禁じた決まりはなく、控えるかどうかは慣習と気持ちの問題です。
忌中は、亡くなってから四十九日法要までのおよそ49日間を指します。
仏教の考え方で、故人を送り出す準備をする期間とされ、この間は祝い事や派手な行動を控えるのが一般的です。
喪中は、一周忌までのおよそ1年間です。
故人をしのびながら少しずつ日常に戻っていく期間とされ、年賀状や正月飾りを控えるのはこちらの考え方によります。
葬儀社の解説でも、忌中のライブは「控えるのが無難」、喪中のライブは「もともと予定していたなら柔軟に考える人が多い」という書き方がほとんどです。
ライブやコンサートは結婚式のような祝い事とは違い、映画や観劇と同じ娯楽として扱われることが多いからです。
迷いが大きいのは忌中のあいだで、喪中に入ってからは自分と家族の気持ちで決めてよいと考える人が多くなります。
喪中に誕生日を祝ってよいかについては、次の記事で立場別にまとめています。
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喪中の誕生日は祝っていい?おめでとうの言い換えと立場別の考え方
喪中の誕生日は祝ってもいいのかを、自分が喪中のとき・相手が喪中のとき・「おめでとう」と言ってしまったときの立場別に整理。忌中との違いや言い換えの言葉、亡くなった人の誕生日の過ごし方も確認します。
喪中・忌中のライブは誰が亡くなったかで変わる
時期と並んで気になるのが、亡くなったのが誰なのかという点です。
国家公務員が親族を亡くしたときの休暇の日数は、人事院規則で続柄ごとに定められています。
最も長い配偶者と父母でも7日です。
人事院規則一五―一四の別表第二に、親族が亡くなったときの特別休暇の日数が並んでいます。
「どのくらい喪に服すか」を考えるときに、数字ではっきり示されている数少ない目安です。
これは仕事を休む日数であって、「何日たてばライブに行ってよい」と国が決めているわけではありません。
それでも、祖父母なら3日、配偶者や父母なら7日という区切りを知ると、続柄によって周りが求める慎み方にも差があることが見えてきます。
祖母を亡くした孫の立場と、親を亡くした子の立場では、同じ忌中でも家族のなかでの役割が違います。
親を亡くした場合は、四十九日法要や相続の手続きを担うことも多く、気持ちの面でも時間の面でもライブどころではない時期が続きがちです。
続柄が近いほど、ライブの予定は「行くかどうか」より先に「家族の予定と重ならないか」から考えることになります。
同じ考え方で、忌中に飲み会へ誘われたときの判断も整理しています。
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忌中に飲み会へ行くのは非常識?国が定める服喪の日数と断り方
忌中に飲み会へ行くのは非常識なのか。忌中と喪中の違い、国が定める忌引の日数、会社と友人での考え方の違い、断り方と出るときの工夫まで整理します。
亡くなってからの時期ごとの考え方
続いて、亡くなってから何日目かという時期ごとに見ていきます。
葬儀から初七日までは控え、四十九日を過ぎたら本人と家族の気持ちで決める、というのが多くの人の受け止め方です。
葬儀の前後は、通夜や告別式、役所の手続きなどが続きます。
この時期にライブへ行くと、周りから見て「葬儀の日程とぶつかっていないか」と心配されやすく、本人もなかなか楽しめません。
初七日を過ぎて四十九日までの忌中は、判断が最も分かれる時期です。
落ち着いた着席型のコンサートなら行くという人もいれば、声を出して盛り上がるライブは四十九日が明けるまで待つという人もいます。
四十九日法要を終えて喪中に入ると、控える理由として挙げられることの多い「忌」の期間が明けます。
この時期なら、家族に一言伝えたうえで行く人が多くなります。
日数そのものより、四十九日法要などの家族の予定とライブの日程がどれだけ近いかのほうが、周りの受け止め方を左右します。
喪中のカウントダウンライブは受け止め方が少し違う
年越しのカウントダウンライブは、普通のライブと少し事情が異なります。
新年を迎えるお祝いの意味合いが強いため、喪中の年は「新年を祝う行事」として控える人もいます。
喪中の年末年始は、義実家への帰省や年賀状など、ほかにも迷うことが重なります。
お正月の過ごし方は次の記事でまとめています。
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喪中の正月に義実家へ行くべき?誰が喪中かで変わる考え方
喪中の正月に義実家へ行くべきか。誰が喪中にあたるのかの分け方、忌引の日数、行く場合の挨拶と手土産、控える場合の伝え方まで整理します。
すでにチケットを持っているときの選択肢
気持ちの整理とは別に、手元のチケットをどうするかという実務の問題があります。
購入者の都合による払い戻しは受け付けていないことが多く、行けない場合は公式のリセールか、主催者が認める範囲での譲渡を考えることになります。
チケットぴあの払い戻しの案内は、主催者の都合で公演が中止・延期・内容変更になった場合を対象にしています。
身内の不幸は購入者側の事情なので、原則として払い戻しの対象にはなりません。
ただ、主催者に事情を伝えると個別に相談に乗ってもらえる場合もあるので、問い合わせてみる価値はあります。
代わりに使えるのが、チケット販売会社の公式リセールです。
チケットぴあのリセールは、やむを得ず行けなくなった人がチケットを定価で出品できる仕組みで、売れた場合はチケット代金の10%と送金手数料275円が差し引かれ、約3週間後に返金されます。
公演によってはリセールの対象外になるので、自分のチケットで使えるかを先に確認しておきましょう。
友人や家族に譲る方法もあります。
いわゆるチケット不正転売禁止法が禁じているのは、興行主の同意を得ずに、業として、販売価格を超える価格で転売することです。
定価で知人に譲ること自体は、この法律の「不正転売」には当たりません。
ただし、入場時に本人確認がある公演や、主催者が譲渡や名義変更を認めていない公演では、譲り受けた人が入場できないことがあります。
チケットを無駄にしたくない気持ちは自然なもので、決める前に手放す方法を知っておくと、行くかどうかを落ち着いて考えられます。
行くと決めたときに気をつけたいこと
ここからは、行くと決めた場合の過ごし方です。
行くと決めたら、まず家族に一言伝えておくことが、あとで気まずくならないためのいちばんの備えになります。
特に忌中は、法要の日程を決めている最中だったり、ほかの家族がまだ気持ちを立て直せていなかったりします。
黙って出かけるより、「前から決まっていた予定で、行ってこようと思う」と伝えておくほうが、家族も受け止めやすくなります。
SNSへの投稿も気をつけたい点です。
本人は気持ちの切り替えのつもりでも、「最高の夜」といった投稿を親族が見ると、受け止め方が分かれることがあります。
忌中のあいだは、ライブの投稿を控えめにしておくと安心です。
亡くなった人が好きだったアーティストのライブなら、少し事情が変わります。
故人の代わりに聴きに行く、思い出の曲を聴いて偲ぶという形は、家族にも受け入れられやすいものです。
行くかどうかより、行ったあとに家族とどう過ごすかのほうが、関係に長く残ります。
行かないと決めたとき、同行者にどう伝えるか
最後に、行かないと決めた場合の伝え方です。
友人と一緒に行く予定だったなら、早めに事情を伝え、チケットの扱いを相談するのがいちばん角が立ちません。
ライブの予定で本当に困るのは、一人で行く場合より、仲のいい友人と行く約束をしている場合です。
入金も済ませていて、自分が行かないと言えば相手の予定まで変わってしまうので、決めきれないまま日にちだけが近づいていきます。
伝えるときは、「忌中だから」と理由を細かく説明するより、「身内に不幸があって、まだ気持ちの整理がつかない」と伝えるほうが、相手も受け止めやすくなります。
そのうえで、チケットをリセールに出すのか、相手の知り合いに譲るのかを一緒に決めると、相手の負担も小さくなります。
逆に、友人から「行ってきたら」と背中を押してもらえることもあります。
その言葉に甘えて出かけることも、気持ちを休める一つの形です。
行かないと決めることも、行くと決めることも、故人を大切に思う気持ちから出た選択であれば、どちらも間違いではありません。
喪中・忌中のライブに関するよくある質問
祖母の忌中にライブへ行ってもいいですか?
決まりはありません。人事院規則では祖父母の忌引は3日です。葬儀や法要の日程と重ならず、家族に伝えたうえでなら、行く人は少なくありません。
初七日の前にライブの予定があります。
葬儀から初七日までは手続きや法要が続くため、控える人がほとんどです。チケットは公式リセールや譲渡を検討してもよい時期です。
親の四十九日の前にコンサートがあります。
親を亡くした場合は法要の準備を担うことが多く、日程が近いなら控える人が多くなります。着席型のコンサートで、家族の理解があれば行くという人もいます。
喪中にカウントダウンライブへ行ってもいいですか?
新年を祝う意味合いが強いため、喪中の年は控える人もいます。家族の考え方を聞いてから決めると安心です。
亡くなった人が好きだったアーティストのライブは?
故人を偲ぶ気持ちで行くのであれば、家族にも受け入れられやすい形です。
身内の不幸でチケットを払い戻してもらえますか?
払い戻しは主催者都合の中止や延期が対象で、購入者の事情では原則として対象外です。公演によっては公式リセールを使えます。
行けなくなったチケットを友人に譲ってもいいですか?
定価で知人に譲ること自体は不正転売には当たりません。ただ、本人確認がある公演や、主催者が譲渡を認めていない公演では入場できないことがあります。
浄土真宗でも忌中は控えるべきですか?
浄土真宗には忌や喪という考え方そのものがないとされています。ただ、家族や親族が別の考え方をしていることもあるので、周りと話しておくと安心です。
まとめ
喪中や忌中にライブへ行ってはいけないという決まりはなく、忌中は控える人が多く、喪中は本人と家族の気持ちで決める人が多い、というのが実際のところです。
国が定める忌引の日数も、配偶者や父母で7日、祖父母で3日と、四十九日よりずっと短い区切りになっています。
迷いを大きくしているのは、決まりそのものより、家族からどう見えるか、チケットを無駄にしてよいのかという2つの心配です。
家族の予定と重ならないかを確かめ、一言伝えておくこと。
チケットは払い戻しが難しくても、公式リセールや定価での譲渡という手放し方があると知っておくこと。
この2つがそろえば、どちらを選んでも後ろめたさは小さくなります。
楽しみにしていたライブは、悲しみのなかで気持ちを少し休める場所にもなりますし、見送ることで故人と向き合う時間にもなります。
自分が納得できるほうを選ぶことが、いちばんの供養になるのかもしれません。