身内を亡くした年の年末は、いつもと同じ相談ができなくなります。
義実家への帰省もそのひとつです。
行けば正月らしい空気のなかに自分だけ喪中の人間として入ることになり、行かなければ気を遣わせたり、角が立ったりしないかが気になります。
そして厄介なことに、まわりの人の言うことがそろいません。
「喪中なんだから行かないのが常識」と言う人もいれば、「気にしなくていい」と言う人もいます。
どちらが正しいのか分からないまま、年末が近づいてきます。
先にお伝えすると、喪中の年に義実家へ行ってはいけないという決まりはありません。
ただし、判断がしやすくなる整理のしかたはあります。
行くことを勧める記事でも、控えることを勧める記事でもありません。
決めるための材料を並べています。
この記事は、e-Gov法令検索に掲載されている人事院規則の条文、神社本庁の公式サイト、および葬儀社各社の公式サイトをもとに整理しています。
まずは、いちばん混乱しやすいところから見ていきましょう。
喪中の正月に義実家へ行ってはいけない決まりはない
最初に結論を置いておきます。
ここがはっきりすると、あとの話が進めやすくなります。
喪中のあいだ義実家へ行ってはいけないという決まりは、どこにもありません。
喪中そのものが、法律で決められた制度ではないからです。
葬儀社の説明でも、喪に服す期間は「法的決定権がなく、一般的な期間と親等に基づく」とされています。
四十九日や一年という線は、昔からの目安として広く知られているだけで、破ったら何かが起きるものではありません。
それでも迷うのは、決まりがないことの裏返しでもあります。
この判断は、最初から自分に任されています。
だからこそ、次に見る「誰が喪中なのか」をはっきりさせておくと楽になります。
まず「誰が喪中なのか」を分けて考える
続いて、この問題のいちばん大事なところです。
ここを分けずに考えると、答えが出ません。
自分が喪中でも、配偶者の実家まで喪中になるわけではありません。
読売新聞の発言小町に、実の父を亡くしたばかりの人が義実家への帰省を迷って投稿したトピックがあります。
そこに寄せられた回答のひとつが、この点をはっきり言っていました。
配偶者の家は喪中ではないので、それに合わせればいい、という内容です。
つまり、義実家の正月は例年どおり行われます。
合わせるか、自分の分だけ控えるかは自分の側で決める話であって、義実家に何かを変えてもらう話ではありません。
2つ目は見落とされがちですが、実際にあります。
知恵袋には、妻の祖父母を亡くした男性が「喪中だから帰省しないのが常識」と自分の親に言われ、その常識は本当にあるのかと尋ねた質問があり、2万人以上に読まれています。
自分がどの立場にいるのかが分かるだけで、相談すべき相手が変わります。
1つ目なら夫と、2つ目なら自分の親と話すことになります。
喪中にあたるのはどこまでか
では、どこまでの親族が亡くなったら喪中になるのでしょうか。
ここにも、はっきりした目安がひとつだけあります。
国家公務員が親族を亡くしたときに休める日数は、人事院規則で親族ごとに決まっています。
人事院規則一五―一四の別表第二です。
喪中の長さを決めたものではありませんが、どの親族までをどれくらい重く見ているかが数字で分かります。
先ほどの知恵袋のケース、つまり妻の祖父母が亡くなった場合をこの表に当てはめると、夫の忌引は1日です。
「帰省を取りやめるほどか」と考える手がかりにはなります。
ただし、これはあくまで勤め先を休める日数です。
神社本庁も、忌引の日数について「基本的には各地域の慣例に従っているのが現状」と書いています。
家や地域の考え方は、この数字とは別にあります。
親が「喪中だから」と言うとき、その人は数字ではなく自分の育った土地の感覚を話しているので、正しい正しくないの話にはなりません。
義実家が喪中でないなら、正月は例年どおり行われる
立場が整理できたところで、実際にどうなるかを見ておきます。
自分だけが喪中の場合、義実家ではおせちも初詣もいつもどおり用意されます。
ここで無理に全部を避けようとすると、かえって場がぎくしゃくします。
先ほどの発言小町の回答も、そこを具体的に書いていました。
新年の挨拶は「おめでとう」と言わずに頭を下げるだけでもよく、初詣に一緒に行っても参拝だけ控えるという形が取れる、という内容です。
その場のすべてを喪中に合わせる必要はなく、自分が引っかかるところだけ控えれば足ります。
そう考えると、行くか行かないかの二択で悩む必要も薄れてきます。
行くと決めたときにしておくこと
行く側を選んだ場合の準備です。
ここは形が決まっているので、知っておくと迷いません。
気をつけるのは、挨拶の言葉と、手土産の掛け紙の2つです。
新年の挨拶は「あけましておめでとうございます」を避けて、「本年もよろしくお願いいたします」「昨年はお世話になりました」に言い換えます。
手土産は、のし紙の扱いが変わります。
香典や供花をいただいている場合は、行くことにもうひとつ意味が出ます。
発言小町に投稿した人も、正月に顔を出せば直接お礼が言えるという点を迷いの材料に挙げていました。
控えることだけが気づかいではなく、会って伝えられることもあります。
なお、喪中かどうかにかかわらず義実家への帰省そのものが負担だという場合は、話が別になります。
その場合の考え方は下記にまとめています。
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正月に義実家へ行きたくないとき|帰省しない人の割合と減らし方
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控えると決めたときの伝え方
控える側を選んだ場合です。
こちらは言い方ひとつで印象が変わります。
自分から直接断るより、夫から伝えてもらうほうが角が立ちません。
妻が「行きません」と言うと、義実家には拒まれたように受け取られることがあります。
同じ内容でも、夫が「妻が喪中なので今年は控えたい」と伝えれば、夫婦で決めたこととして伝わります。
断るという形にせず、時期をずらすという形にすると受け入れられやすくなります。
「お正月は失礼しました、改めてご挨拶させてください」と続けられるからです。
控えたことが、そのまま関係の切れ目にはなりません。
実家の親が一人になったとき
ここからは、喪中よりも重いことがあります。
実はこちらが本当の争点になっていることが少なくありません。
喪中の年は、同時に実家の親がひとりになった年でもあります。
発言小町に、一人娘の女性が投稿したトピックがあります。
父を亡くし、例年は三が日に義父母の家で義弟一家と半日を過ごしているけれど、今年は一人きりになった母と静かに迎えたい、という内容でした。
寄せられた回答は、ほぼ全員が実家を優先してよいという方向でした。
なかには、姑のほうから「あなたのご実家に行ってあげたら、きっと寂しいと思うから」と言ってくれたという体験談もありました。
最後の点が大きいところです。
喪中は一年で明けますが、親が一人になったことは続きます。
今年の帰省先をどうするかと同時に、来年からどう分けるかも話しておくと、毎年同じ相談を繰り返さずに済みます。
どちらの実家を優先するかの考え方は、下記にまとめています。
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初詣や親戚の集まりはどうするか
最後に、正月そのものの過ごし方です。
ここには神社の側からの答えがあります。
神社本庁は、五十日を過ぎれば原則として神社の参拝を再開して差し支えない、としています。
公式サイトの「服忌について」というページです。
忌とは故人の祭りに専念する期間、服とは哀悼の気持ちを表す期間だと説明したうえで、慣例が特にない場合は五十日祭までが忌の期間、一年祭までが服の期間とするのが一般的だとしています。
つまり、四十九日を過ぎていれば初詣そのものは問題にならないということです。
一年間ずっと鳥居をくぐれないわけではありません。
親戚が集まる場についても、考え方を変えると出やすくなります。
葬儀社の記事には、新年を祝う会ではなく旧年中に亡くなった故人を偲ぶ会だと親族に伝えておく、という方法が紹介されていました。
集まりそのものをなくすのではなく、名目を変えるという形です。
同じように、年末年始の飲み会に出るかどうかで迷う場面もあります。
そちらは下記にまとめています。
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喪中の正月と義実家に関するよくある質問
喪中でも義実家に帰省していいですか?
帰省してはいけないという決まりはありません。喪中の期間そのものが法律で決められたものではなく、家や地域の考え方によって扱いが変わります。
嫁の親が亡くなったら、夫も喪中になりますか?
一般には二親等までが目安とされ、配偶者の父母は範囲に入ります。国家公務員の忌引でも、配偶者の父母は3日(生計をともにしていた場合は7日)が認められています。
親が亡くなって初めての正月は喪中ですか?
喪中にあたります。ただし亡くなってから四十九日を過ぎているかどうかで、控える範囲の考え方は変わります。
義実家で「あけましておめでとう」と言われたらどうしますか?
「本年もよろしくお願いいたします」と返せば足ります。黙って頭を下げるだけでもかまいません。
喪中のとき、義実家への手土産はどうすればいいですか?
「お年賀」と書いた掛け紙や紅白の水引は避け、無地の掛け紙にするか表書きを「御挨拶」に変えます。品物は日常で使うものが選ばれます。
喪中でも初詣に行っていいですか?
神社本庁は、50日を過ぎれば原則として神社の参拝を再開して差し支えないとしています。忌の期間中にやむを得ず参拝する場合は、お祓いを受けてからとされています。
喪中の新年会は参加してもいいですか?
参加してはいけないという決まりはありません。会社の集まりは仕事の延長として扱われることが多く、参加する人が大半だとされています。
義実家に行かないと伝えるとき、誰から言うべきですか?
夫から伝えてもらうほうが角が立ちません。妻から断ると、拒まれたように受け取られることがあります。
喪中で正月に行けなかった場合、いつ挨拶に行けばいいですか?
松の内が明けたあとに改めて伺う形が一般的です。断るのではなく時期をずらすと伝えると、受け入れられやすくなります。
まとめ
喪中の正月に義実家へ行ってはいけないという決まりは、ありません。
喪中そのものが法律で決められた制度ではなく、四十九日や一年という線は昔からの目安です。
国が定めているのは休める日数のほうで、配偶者の父母なら3日、配偶者の祖父母なら1日。
神社本庁も、忌引については各地域の慣例に従っているのが現状だと書いています。
つまり、どこにも全国共通の正解はありません。
そのうえで手がかりになるのは、誰が喪中なのかを分けることです。
自分が喪中でも配偶者の実家まで喪中になるわけではないので、義実家の正月は例年どおり行われます。
合わせるか、自分の分だけ控えるかは、こちらで決められます。
全部を避ける必要はなく、引っかかるところだけ控えれば足ります。
控えると決めたなら、夫から「今年は控えたい」と伝えてもらい、松の内が明けてから改めて伺うと申し出る。
行くと決めたなら、挨拶を「本年もよろしくお願いいたします」に変えて、手土産の掛け紙を無地にする。
どちらを選んでも、形を少し変えるだけで収まります。
そしてもうひとつ。
この年は、実家の親がひとりになった年でもあります。
義実家に行くか行かないかを決めるより先に、来年からの正月をどう分けるかを話しておくと、毎年の相談がずっと軽くなります。