暖房を切って部屋を冷やせば、ゴキブリは寒さで消えてくれるのではないか。
冬でも姿を見かけた経験があると、一度は考えることだと思います。
結論を先に書くと、暖房を切ってもゴキブリはいなくなりません。
理由は温度が足りないからで、しかも下げようとすること自体に別の問題があります。
この記事の信頼性:フマキラーが公開している生態情報、国土交通省・厚生労働省のスマートウェルネス住宅等推進調査、WHOの住まいと健康に関するガイドラインをもとにまとめています。
まずは、ゴキブリが弱る温度から確認していきましょう。
ゴキブリが弱る温度と死ぬ温度
最初に、どのくらい寒ければ効くのかという基準を押さえます。
ゴキブリにとって最適なのは20〜25℃で、20℃以上の環境なら生息できます。
10℃を下回ると活動が低下し、繁殖能力も落ちるとされています。
フマキラーの解説によれば、ゴキブリは30℃まで上がると飛び回るようになる一方、10℃を下回る時期や寒い地域では見かけなくなります。
活動が完全に止まるのは5℃以下で、その状態が長く続くと死に至るとされています。
ここで注意したいのは、10℃と5℃のあいだにある差です。
10℃前後は「動きが鈍くなるだけ」で、死んではいません。
寒さで倒すつもりなら、狙うべきは5℃以下という、かなり厳しい数字になります。
暖房を切っても室温は5℃まで下がらない
では、暖房を切った部屋は実際に何度になるのか。
ここに公的な実測データがあります。
国土交通省と厚生労働省が実施したスマートウェルネス住宅等推進調査によると、日本の住宅の居間の在宅中平均室温は16.7℃です。
ゴキブリの活動が止まる5℃には、まったく届きません。
同じ調査では、WHOの冬季室温勧告である18℃を満たさない住宅が全体の6割を占めることも報告されています。
冬に18℃以上だった都道府県は、20℃の北海道を含めてわずか4道県。
九州や四国にも16℃以下の県がありました。
寒い家に住んでいる人ほど実感があると思いますが、日本の住宅はすでにかなり寒く、それでもゴキブリは出ています。
暖房を切って寒くするという発想は、すでに寒い状態から始めて、さらに10℃以上下げようとしていることになります。
現実的な話ではありません。
暖房を切った部屋にも暖かい場所は残る
仮に部屋全体が冷えたとしても、まだ抜け道があります。
冷蔵庫や洗濯機の裏、テレビやパソコンの背面には、家電が出す熱で局所的に暖かい場所が残ります。
ゴキブリはそこに集まります。
フマキラーは越冬場所として、冷蔵庫・洗濯機など家電製品の裏や底面、テレビ・コンピューターの背面、段ボールや古紙、たんすの隙間、そして台所や浴室などの湿った場所を挙げています。
冷蔵庫は暖房を切っても止めません。
部屋の温度を下げても、家の中には24時間動き続ける熱源が残っている以上、ゴキブリが避難する先はなくなりません。
むしろ寒くなるほど、そこに集中します。
クロゴキブリは卵でも幼虫でも冬を越せる
生き物としての設計そのものにも触れておきます。
ゴキブリは冬眠しませんが、越冬はします。
クロゴキブリは卵・幼虫・成虫のすべての段階で冬を越せるとされています。
つまり成虫を見かけなくなっても、卵鞘や幼虫の状態で春を待っていることがあります。
冬に小さなゴキブリを見かけたという話が出てくるのは、このためです。
冬に姿を見なくなることと、いなくなることは違います。
寒さで数が減ったように見えても、卵と幼虫が残っていれば春に元通りになるということです。
窓を開けっ放しにするのは効くのか
暖房を切るより踏み込んだ方法として、窓を開けて外気を入れる案もよく検索されています。
窓を開けても、家電まわりの熱源は消えません。
むしろ開いた窓や網戸の隙間が、新しい侵入口になります。
外気温が5℃を下回る地域であれば理屈のうえでは効きそうですが、部屋全体を屋外と同じ温度にし続けなければ意味がなく、その状態では人が生活できません。
しかも冷蔵庫の裏はその間も暖かいままです。
冷房を入れて冷やすという案も、理屈としては同じところで止まります。
部屋の空気を冷やしても、機械の内側と裏側が暖かいままなら逃げ場は残り続けます。
暖房を切ること自体が体に危ない
ここまでは効くかどうかの話でしたが、それ以前の問題があります。
WHOは2018年11月に公表した住まいと健康に関するガイドラインで、冬季の室内温度を18℃以上に保つよう各国に勧告しています。
このガイドラインは慶應義塾大学の伊香賀俊治研究室が抄訳を公開しています。
WHOは、冬の室温が18℃以上であれば呼吸器系や心血管疾患の罹患・死亡リスクを低減できるとしており、子どもや高齢者にはさらに暖かい環境を提供するよう求めています。
日本の住宅の6割は、暖房を使っていてもこの18℃に届いていません。
そこからさらに暖房を切るという選択は、ゴキブリに効かないうえに、住んでいる人の側だけが負担を引き受ける形になります。
寒さで駆除するという発想は、ここで手放してよいものだと考えられます。
冬はむしろ駆除に向いている
では冬にできることは何もないのかというと、逆です。
ここが今回いちばん伝えたい部分です。
冬はゴキブリの行動範囲が狭まり、暖かい場所に集中します。
居場所が絞り込めるぶん、対策を当てやすい季節です。
フマキラーは秋冬の駆除について、卵と幼虫を一緒に駆除できれば翌年の繁殖を防ぐことができると説明しています。
夏に追いかけ回すより、動きが鈍って一箇所に集まっている時期に仕留めるほうが効率がいいという考え方です。
ベイト剤が効くのは、食べた個体が巣に戻って糞や死骸を介して仲間にも作用するためです。
冬に卵と幼虫ごと数を減らしておけば、翌年の夏に出てくる数そのものが変わります。
暖房を切って我慢するより、暖かくした部屋で毒餌を置くほうが、ゴキブリにとってはよほど不都合な状況になります。
煙で追い出す方法が効くのかどうかは、下記の記事で検証しています。
-
-
蚊取り線香はゴキブリに効く?退治できない理由と正しい対策を解説
蚊取り線香でゴキブリは退治できるのか検証しました。結論は退治には不向きで、体格が大きく煙では仕留めきれず耐性個体もいるためです。効きにくい理由と、ベイト剤・くん煙剤など本当に効く駆除・予防の方法をわかりやすく解説します。
香りで寄せ付けないという方法についても、効く条件と効かない条件がはっきりしています。
無印良品のアロマストーンにハッカ油を垂らす方法を検証したのが下記の記事です。
-
-
無印のアロマストーンでゴキブリ対策はできる?研究と公式仕様で検証
無印のアロマストーンはゴキブリ対策になるのか、査読論文と無印良品の公式仕様をもとに検証しました。精油の研究結果、公式が想定する使い方、猫がいる家で避けるべき理由まで解説します。
冬のゴキブリに関するよくある質問
冬に暖房をつけないとゴキブリはいなくなりますか?
いなくなりません。活動が止まるのは5℃以下とされていますが、日本の住宅の居間の在宅中平均室温は16.7℃で、暖房を切ってもその温度までは下がりません。
冬にゴキブリは出るのですか?
出ます。ゴキブリは冬眠せず越冬し、暖房の効いた室内や家電まわりの熱源に集まります。
冬の間、ゴキブリはどこにいますか?
冷蔵庫や洗濯機の裏や底面、テレビやパソコンの背面、段ボールや古紙、たんすの隙間、台所や浴室などの湿った場所とされています。
窓を開けっ放しにすれば死にますか?
家電まわりの熱源が残るため、逃げ場はなくなりません。開けている間は外からの侵入口にもなります。
冷房を入れて冷やすのはどうですか?
同じ理屈で効きません。空気を冷やしても機械の裏側は暖かいままです。
冬に小さいゴキブリを見たのですが?
幼虫の可能性があります。クロゴキブリは卵・幼虫・成虫のすべての段階で冬を越せるとされています。
冬にゴキブリの死骸を見つけたのですが、減っているということですか?
一部が死んでいても、卵鞘や幼虫が残っていれば春に数は戻ります。姿を見なくなることと、いなくなることは別です。
冬に暖房を切るのは体に悪いのですか?
WHOは2018年に冬季室内温度18℃以上を勧告しています。18℃未満では血圧の上昇や心電図の異常所見の増加が報告されています。
冬にできる対策で効果が高いのは何ですか?
ベイト剤を暖かい場所に置くことです。冬は居場所が絞られるため当てやすく、卵と幼虫ごと減らせれば翌年の繁殖を抑えられます。
冬はスプレーとベイト剤のどちらがいいですか?
ベイト剤です。冬は動きが鈍く飛び回らないため、見つけて吹きかける機会自体が少なくなります。
まとめ
冬に暖房をつけなければゴキブリがいなくなるかというと、答えは「いなくなりません」でした。
理由は単純で、温度がまったく足りないからです。
活動が止まるとされるのは5℃以下ですが、国土交通省・厚生労働省の調査による日本の住宅の居間の在宅中平均室温は16.7℃。
WHOの勧告18℃を満たさない住宅が6割という寒さのなかで、それでもゴキブリは出ています。
暖房を切って下げられる幅では、届く数字ではありません。
しかも冷蔵庫や洗濯機は暖房を切っても止まらず、その裏側は暖かいままです。
クロゴキブリは卵でも幼虫でも成虫でも冬を越せます。
寒さで追い詰めるという作戦は、相手の設計に対して噛み合っていません。
そのうえWHOは冬季18℃以上を勧告しており、下回れば血圧や心電図に影響が出ることが報告されています。
効かない方法のために、住んでいる人だけが寒さを引き受ける形になってしまいます。
視点を変えると、冬は攻めどきです。
ゴキブリの居場所が暖かい数か所に絞られるこの時期に毒餌を置いておけば、卵と幼虫ごと数を減らせて、翌年の夏に出てくる数が変わります。
暖房はつけたまま、置くものを置く——そのほうが、人にもゴキブリ対策にも無理がありません。