年末になると、頭のどこかで数え始める。
黒豆、きんとん、なます、煮しめ。
30日と31日はほぼ台所に立ちっぱなしで、それでも三が日の終わりには重箱に何かしら残っている。
おいしいと言われた記憶も、そういえば少ない。
それでもやめられないのは、家族ががっかりするのではないかという心配のほうです。
費用や手間だけなら、とっくに結論は出ています。
この記事では、いま実際にどれくらいの人が食べているのかを確かめたうえで、全部やめる以外の選択肢と、家族への切り出し方までを整理しました。
やめてしまえと勧める記事でも、伝統だから続けるべきだと諭す記事でもありません。
毎年なんとなく同じ量を作り続けている状態を、自分で決められる状態に変えるための内容です。
この記事の調査データは公表されている原典を確認し、実施主体・時期・回答数を明記したうえで引用しています。
まずは、みんながどうしているのかから見ていきましょう。
おせちを食べる予定の人は半数を切っている
いらないと思うのは自分だけではないか、というところから確かめます。
おせちを食べる予定だと答えた人は43.4%で、半数を切っていました。
ロイヤリティ マーケティングが2025年10月31日から11月4日にかけて、20代から60代の男女1,000名に実施した調査による数字です。
性別と年代ごとに100サンプルずつ均等に割り付けて行われています。
食べない予定と答えた人が3割を超えています。
そのうえで、4人に1人が「わからない」と答えているのが実態です。
そして年代によって開きがありました。
食べる予定と答えた人は、20代では35.0%、60代では59.0%です。
24ポイントの差があります。
上の世代ほど当たり前のものとして扱っていて、下の世代ほどそうではない。
世代間で話が噛み合わないのは、感覚の違いではなく実際の行動が違うからです。
おせちを手作りしている人は7人に1人しかいない
続いて、作っている人がどれくらいいるのかを見ます。
ここが意外に知られていません。
おせちを手作りのみで用意している人は14.5%でした。
同じ調査の準備方法についての回答です。
購入のみが45.4%、購入と手作りの両方が32.5%で、この2つで約8割を占めます。
購入先はスーパーや量販店が55.6%で最も多い結果でした。
年末に何日もかけて全部作っている人は、7人に1人です。
台所に立ちながら「みんなこうしているはず」と思っていたとしたら、その前提はもう成り立っていません。
材料費も無視できません。
年末は食材そのものが値上がりする時期で、ひととおり揃えると1万円前後かかったという声もあります。
そこに30日と31日の時間を足して、残る量まで計算に入れると、割に合わないと感じるのは自然な結論です。
おせちを食べない人の割合が調査によって違う理由
割合を調べていると、数字がばらついていることに気づきます。
「わからない」と答える人が、どの調査でも2割から3割います。
先ほどの調査では「わからない」が25.1%でした。
読者280人に聞いた別の調査でも、食べる予定105人、食べない予定128人に対して未定が48人います。
272人に聞いた調査では食べない人が43%という結果でした。
数字が動く理由は主に2つです。
ひとつは聞く時期で、11月の時点ではまだ決めていない人が多くいます。
もうひとつは設問の立て方で、「食べますか」と「用意しますか」では答えが変わります。
実家で出されたものを食べる人は、自分では用意しませんが食べてはいるからです。
つまり「食べない人が多数派になった」と言い切れるほど単純ではありません。
ただし、用意する側にまわっている人が半数以下だという点は、複数の調査で共通しています。
やめることが特殊な選択ではなくなっている、というところまでは確実に言えます。
おせちがいらないと感じる理由は味だけではない
次に、いらないと感じる理由を整理します。
挙がっている理由は、味・手間・費用・好みの4つに分かれます。
食べない理由を尋ねた調査では、美味しくない・好きな食材がない、そもそも食べる習慣がなかった、食材が高いといった回答が並びました。
同じ調査では、10代から20代の若い層ほど食べないと答える割合が高くなっています。
このうち味の問題は、もともとの目的を考えると説明がつきます。
保存が効くように濃く甘く味付けされた料理なので、冷蔵庫がある今の生活では、その味の必然性が失われています。
おいしくないと感じるのは舌の問題ではなく、料理の設計が現在の環境と合っていないからです。
おせちをやめられない本当の理由
理由が揃っているのに、それでも手が止まる人は多くいます。
やめられない理由の中心にあるのは、費用でも手間でもなく、家族への遠慮です。
長年作ってきた人が、やめようか迷っている胸の内を書いた投稿があります。
作っても残るだろうと分かっている。
それでも「娘たちは優しいから、残したら私に悪いと思って無理して食べようとしてくれるだろうな」と考えてしまう。
そして簡単にしたら娘たちががっかりするだろうか、とも迷っている。
ここには入れ子構造があります。
作る側は家族ががっかりすることを心配し、食べる側は作った人に悪いと思って無理をしている。
どちらも相手を気遣った結果、誰も望んでいない量が毎年再生産されていきます。
だから、切り出すときに聞くべきなのは「やめていいか」ではありません。
「どれが好きか」を先に聞くと、話が具体的になります。
全部いらないと言うのは言いにくくても、これが好きだと言うのは言いやすいからです。
おせちは全部やめずに減らすという選択
やめるか続けるかの二択にしないほうが、実際には進みます。
物価高への対応として「少量にして無駄を減らす」と答えた人が39.4%いました。
先ほどの1,000名調査での回答です。
予算そのものは「ほぼ同じ」が83.8%で、金額を変えるのではなく量のほうを調整している人が多いことが分かります。
実際に、好きな2品だけ手作りして、かまぼこと伊達巻は買うという形に落ち着いた人もいます。
病気をきっかけに全部やめて、ローストビーフとチーズに切り替えたところ、来客からはむしろ喜ばれたという話もありました。
どこの家でもおせちは食べているので、正月に違うものが出てくること自体が歓迎される場合もあります。
贈り物をやめるときと同じで、一度に全部を変えるより段階を踏むほうが角が立ちません。
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おせちの代わりに何を食べているか
やめた家庭が正月に何を食べているのかも見ておきます。
いちばん多く挙がるのはお雑煮です。
食べない人に代わりに何を食べるかを尋ねた調査では、お雑煮が最も多く挙がりました。
おせちは食べないけれどお雑煮は食べる、という声が非常に多かったと報告されています。
次いで寿司、カニ鍋、すき焼き、焼肉、刺身が並びます。
読者280人に聞いた調査でも、普段より少し奮発して高級な肉を買うという傾向が見られました。
正月をごちそうの日として残しつつ、中身だけを家族が食べたいものに入れ替えているわけです。
お雑煮が残っているのは示唆的です。
手間が軽く、家ごとの味があり、しかも温かい。
おせちの何が負担だったのかが、残ったものの側から見えてきます。
おせちの由来は思っているほど古くない
伝統だからと言われたときのために、由来も確かめておきます。
おせちの語源は「御節供」で、もとは神様への供え物だったとされています。
節ごとに収穫を神様に感謝して供える風習があり、そこで供えた作物を料理したものが御節料理と呼ばれるようになった、というのが一般的な説明です。
平安時代に宮中行事として定着し、江戸時代に五節句が祝日と定められたことで庶民にも広がったとされます。
ここで注目したいのが、重箱です。
重箱に詰める形式が一般的になったのは、江戸時代末期から明治にかけてとされています。
上の世代から伝統だと言われると反論しづらいものですが、いま思い浮かべる形のおせちは、数百年前から変わらず続いてきたものではありません。
時代に合わせて形が変わってきた料理であり、いまの家族に合わせて変えることも、その流れの延長にあります。
義実家のおせちが負担なときの断り方
自分の家の話ではなく、行った先の話という場合もあります。
理由を自分の側の事情にすると、相手を否定せずに済みます。
義実家で出されるおせちが口に合わない、あるいは衛生面が気になるという相談は実際にあります。
ただ、その理由をそのまま伝えるわけにはいきません。
かといって毎年体調を理由に避け続けるのも限界があります。
そこで使われているのが、「子どもの食育のために、今年は別でおせちを注文した」という切り出し方です。
相手の用意したものを否定せず、自分の家の方針として持ち込む形になります。
しかも一度これで通せば、翌年以降も同じ店で続ける習慣にできます。
断るのではなく、自分の側から何かを足す形にすると、拒否として受け取られにくくなります。
義実家との年末年始の付き合い全体が負担になっている場合は、おせちだけを切り離して考えないほうが解決が早いこともあります。
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おせちがいらないと感じるときのよくある質問
おせちを食べない人の割合はどれくらいですか?
1,000名への調査では、食べない予定が31.5%、食べる予定が43.4%、わからないが25.1%でした。読者280人への別の調査では食べない予定のほうが多いという結果も出ています。調査時期や設問で数字は動きますが、用意する側にまわっている人が半数以下という点は共通しています。
おせちを食べない理由は何ですか?
味が好みに合わない、好きな食材がない、食べる習慣がなかった、食材が高い、といった理由が挙がっています。年末の30日と31日が準備でつぶれることや、家族の中で好き嫌いが分かれることも理由になります。
おせちを買う人の割合はどれくらいですか?
準備方法では購入のみが45.4%、購入と手作りの両方が32.5%で、合わせて約8割です。手作りのみは14.5%にとどまります。購入先はスーパーや量販店が55.6%で最も多くなっています。
おせちをやめると家族ががっかりしませんか?
作る側は家族の落胆を心配し、食べる側は残すと悪いと思って無理に食べている、という行き違いが起きていることがあります。やめていいかを聞くより、どれが好きかを先に聞くほうが具体的な答えが返ってきます。
全部やめるのが不安です。
物価高への対応として「少量にして無駄を減らす」と答えた人が39.4%いました。品数を減らす、手作りをやめて買う、重箱をやめて大皿にする、という3つの軸で段階的に変えられます。
おせちの代わりに何を食べればいいですか?
最も多く挙がるのはお雑煮です。おせちは食べなくてもお雑煮は食べるという家庭が多くあります。ほかに寿司、すき焼き、鍋、焼肉、ローストビーフ、普段より少し高い肉などが選ばれています。
伝統だからやめるなと言われます。
おせちの語源は御節供で、もとは神様への供え物だったとされています。重箱に詰める形式が一般的になったのは江戸時代末期から明治にかけてとされ、いま思い浮かべる形が数百年変わらず続いてきたわけではありません。
義実家のおせちが苦手な場合はどうすればいいですか?
相手の料理を評価する形にせず、自分の家の方針として持ち込むのが角が立ちにくい方法です。子どもの食育のために別で注文した、という切り出し方が実際に使われています。一度で終わらせず翌年も同じ形にすると定着します。
まとめ
おせちがいらないと感じるのは、わがままでも横着でもありません。
食べる予定の人は43.4%で半数を切り、手作りだけで用意している人は14.5%しかいません。
年末に何日もかけて全部作っている人は7人に1人という状況で、「みんなやっていること」という前提のほうが、もう実態と合わなくなっています。
それでも手が止まるのは、家族への遠慮があるからでした。
作る側は家族ががっかりすると思い、食べる側は残したら悪いと思って無理に食べている。
お互いが相手を気遣った結果、誰も望んでいない量が毎年再生産されていく。
だから切り出すときに聞くべきなのは、やめていいかではなく、どれが好きかのほうです。
そして選択肢は、続けるかやめるかの二択ではありません。
物価高への対応として量を減らすと答えた人が39.4%いたように、品数を減らす、買う形に変える、重箱をやめる。
動かせる軸は複数あります。
代わりに残っているのがお雑煮だという事実も、何が負担だったのかを逆から教えてくれます。
伝統という言葉に押されそうになったときは、重箱の形が定着したのが江戸時代末期から明治にかけてだという点を思い出せば十分です。
おせちは時代に合わせて姿を変えてきた料理で、いまの家族に合わせて変えることも、その延長にあります。