大晦日の夜、テレビの中では大勢が笑っている。
窓の外は静かで、明日から数日は誰とも話す予定がない。
ふだんは一人が平気なのに、この時期だけは違って感じられる。
年末年始だけ寂しさが強くなるのには、はっきりした理由があります。
性格でも運でもなく、この数日に特有の事情が重なるからです。
この記事では、実際に一人で過ごす人がどれくらいいるのかを確かめたうえで、その事情の正体と、先に決めておくと楽になることを整理しました。
一人でいることを「かわいそう」という前提では書いていません。
楽しめないほうが悪いという話でもなく、この数日に何が起きているのかを知って、手を打てるところに手を打つための内容です。
この記事の調査データは公表されている原典を確認し、実施主体・時期・回答数を明記したうえで引用しています。
まずは、実際にどれくらいの人が一人で過ごしているのかから見ていきましょう。
年末年始を一人ぼっちで過ごす人はどれくらいいるのか
自分だけではないか、というところから確かめます。
年末年始を一人で過ごすと答えた人は、年末で16.7%、年始で15.4%でした。
アイブリッジが2017年12月20日から21日にかけて、全国の20歳から69歳の男女1,000名に実施した調査による数字です。
家族や親戚と過ごす人が年末74.4%、年始76.4%で最も多く、その次が一人という順でした。
6人に1人ほどが一人で過ごしている計算になります。
そして年代によって差があり、40代男性では家族や親戚と過ごす人が5割強にとどまり、一人が2割強で最も多いという結果でした。
街全体が家族で過ごしているように見えても、実際にはその中に一定の割合で同じ状況の人がいます。
少数派ではあっても、例外ではありません。
年末年始に一人ぼっちだと寂しさが強まる理由
続いて、なぜこの数日だけ違って感じられるのかを見ていきます。
誰かと一緒に食事をする頻度と、孤独感の強さには、はっきりした関係があります。
内閣府が令和7年12月1日を調査期日として実施した「人々のつながりに関する基礎調査」の結果です。
全国の満16歳以上2万人を無作為に抽出して調査書類を送り、11,873件の有効回答を得ています。
統計法に基づく一般統計調査として行われたものです。
この調査では、孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人の割合を、他人と一緒に食事をとる頻度別に集計しています。
ほとんど毎日の層と、ほとんどない層で約6.4倍の開きがあります。
全体では4.5%なので、「ほとんどない」層だけが突出して高い形です。
ここで年末年始に何が起きているかを考えると、話がつながります。
忘年会、大晦日、元日の食卓、新年会。
この数日は、誰かと一緒に食べる場面が社会全体で一気に増えます。
普段からその機会が少ない人にとっては、差がいちばん見えやすい時期ということです。
寂しさが強まるのは気の持ちようではなく、周囲の頻度が急に上がるからです。
自分の側が変わったわけではありません。
年末年始は一人でいられる場所がなくなる
もうひとつ、この時期に固有の事情があります。
普段は一人で過ごせている人ほど、年末年始は行き場を失います。
一人暮らしの人が書いた文章に、この構造を的確に言い当てたものがあります。
つらいのは「孤独のつらさ」ではなく「孤独でいられないつらさ」だというものです。
一人で本を読める図書館、時間をつぶせるカフェ、いつもの店。
それらが年末年始はまとめて閉まります。
自分と向き合う時間としての一人と、誰ともつながれない状態としての一人は、別のものです。
前者を保つ場所が失われると、後者に転げ落ちてしまう。
この区別は、実際に一人で過ごしている人でなければ出てこない指摘だと思います。
一方で、元日から開いている店も増えていて、昔ほど三が日に困ることはないという声もあります。
どちらが正しいという話ではなく、住んでいる場所と生活圏によって差が出るところです。
だから、自分の生活圏で何が開いているかを、年末までに一度確かめておく価値があります。
当日になってから探すのと、先に知っているのとでは、同じ状況でも重さが変わります。
年末年始に一人ぼっちで過ごすことを選んでいる人もいる
ここまでつらさの側を見てきましたが、反対の立場も確かめておきます。
一人で過ごすことを、自分から選んでいる人も一定数います。
離婚を経て初めて一人の正月を迎える人が、のんびり過ごせると楽しみにしていたところ、知人から「クリスマスもお正月もひとりなの、大丈夫?」と同情されて戸惑った、という話があります。
本人にとっては特別な日ではなく、ふだんの延長でしかなかったわけです。
帰省しないことを選んだ人の理由も、必ずしも寂しさとは限りません。
帰るたびに兄弟と比較され、結婚しないことを責められるので帰省をやめたという50代の人の話があります。
この場合、一人でいるほうがむしろ穏やかです。
一人であることと、つらいことは、同じではありません。
同じ状況にいても、選んだ結果なのか、そうならざるを得なかったのかで意味が変わります。
自分がどちらなのかを一度見ておくと、必要な手当ても変わってきます。
家族と過ごしている人が羨ましいとは限らない
一人でいると、家族で集まっている側が眩しく見えます。
ただ、そちら側の実感は少し違います。
同じ年末年始を、うんざりしながら過ごしている人も相当数います。
一人の年末年始について語られた場で、既婚者から寄せられた声にこういうものがありました。
この時期はイライラが最大になる、会いたくもない義理の家族に会い、普段会わない親戚の子どもにお年玉を渡し、お金だけが出ていく、と。
これは感想ではなく、実際に数字が出ています。
夫の実家への帰省について聞いた調査では、帰省しないと答えた人が46.7%にのぼりました。
泊まりで行っている人は合わせて27.5%しかいません。
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お年玉についても同じです。
負担だと感じている人は7割を超えていて、やめたいがどう切り出せばいいか分からないという相談が毎年繰り返されています。
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家族と過ごす年末年始が、全員にとって楽しいものというわけではありません。
一人の側から見えている風景と、その中にいる人の実感は、かなりずれています。
羨ましく思う必要はない、という話ではなく、比べる相手として想像しているものが実在しないということです。
年末年始に一人ぼっちでも動けるように、先に決めておくこと
ここからは実際の手当てに入ります。
当日に決めようとすると、選択肢が閉まっているうえに気力も落ちています。
年末年始がしんどくなるのは、時間が空いていることそのものより、空いた時間に何もあてがないまま入ってしまうことのほうです。
だから、決めるのは年末より前がいいということになります。
このうち食事は、先ほどの共食のデータを踏まえると軽く扱えません。
一度でいいので、誰かと一緒に食べる予定が入れられないかを考えてみる価値があります。
同居していない家族や友人と直接会って話すことが全くないという人は9.7%いて、決して珍しい状況ではありません。
だからこそ、年に一度この時期に連絡してみる相手を一人決めておくだけでも変わります。
会う相手がいない場合でも、いつもと違うものを食べるという形は残せます。
年越しそばでも、取り寄せた一人分のおせちでもかまいません。
食べるという行為に、その日が特別な日だという印をつけておくと、ただ過ぎていく数日にはなりません。
年末年始にどこにも行けないときの過ごし方
外に出るのが難しい場合もあります。
家から出られなくても、時間に区切りをつける方法はあります。
年末年始がつらくなる理由のひとつは、平日と休日の境目がなくなって、時間の形が失われることです。
何もしないまま数日が溶けると、後になって余計に虚しさが残ります。
長い休みを「お正月」だと考えるから特別に寂しく感じるのであって、まとまった休みを取ったと考えればいい、という見方もあります。
これは強がりではなく、実務的な提案として理にかなっています。
期待していた形と違うから落差が出るのであれば、期待の枠組みのほうを外してしまうという手です。
なお、誰とも話さない日が続いて気持ちが沈むときは、無理に自分でどうにかしようとしなくても大丈夫です。
孤独や孤立について相談できる公的な窓口が用意されていて、年末年始も対応しているところがあります。
気軽に使っていい仕組みです。
一人の年末年始は珍しいことなのか
最後に、そもそもの前提を確かめておきます。
孤独感があると答えた人は、全体で約4割にのぼります。
先ほどの内閣府の調査で、孤独を感じることが「しばしばある・常にある」が4.5%、「時々ある」が13.7%、「たまにある」が19.5%でした。
合わせて約4割です。
年齢別に見ると、「しばしばある・常にある」の割合は30歳代から50歳代で高く、男性は50歳代、女性は30歳代で高いという結果でした。
若い人だけの話でも、高齢者だけの話でもありません。
働き盛りとされる年代がいちばん高いのです。
この数字を見て安心する必要はありませんが、少なくとも自分だけが特別に何かを失敗しているわけではないということは言えます。
同じ状況の人がいると分かるだけで気持ちが軽くなったという声は、実際に多く見られます。
一人で年末年始を過ごすことは、珍しくもなければ、失敗でもありません。
そのうえで、しんどいと感じるなら手を打てばいいだけです。
年末年始の付き合いそのものを軽くしたいという方向で考えている人も少なくありません。
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年末年始を一人で過ごすときのよくある質問
年末年始を1人で過ごす人はどれくらいの割合ですか?
1,000名を対象とした調査では、一人で過ごすと答えた人が年末16.7%、年始15.4%でした。家族や親戚と過ごす人が7割台で最多です。40代男性に限ると、一人が2割強で最も多いという結果でした。
なぜ年末年始だけ寂しく感じるのですか?
誰かと一緒に食事をする機会が社会全体で急に増える時期だからです。11,873件の回答を得た調査では、共食がほとんど毎日の人で孤独感が「しばしばある・常にある」のは2.7%、ほとんどない人では17.3%と約6.4倍の差がありました。周囲の頻度が上がることで差が見えやすくなります。
お正月を1人で過ごすなら何がいいですか?
当日に決めようとすると店も施設も閉まっているので、年内に決めておくのが要点です。三が日に開いている場所を一つ確かめる、食事をどうするか決める、初詣の時間帯を決める、といった準備で当日の負担が下がります。
年末年始どこにも行けない時の過ごし方は?
時間に区切りをつけることが効きます。起きる時間を普段と揃える、大掃除を1日1か所に分ける、年越しの瞬間だけ決めた番組を見る、といった形です。休みの形が崩れると後から虚しさが残りやすくなります。
一人でいるのはかわいそうだと思われますか?
同情されて戸惑ったという声は実際にあります。一人暮らしの人にとって年末年始はふだんの延長でしかなく、周囲の心配が的外れなことも多くあります。帰省先で比較されるのを避けるために、あえて一人を選んでいる人もいます。
家族と過ごしている人が羨ましくなります。
その側にも負担はあります。夫の実家への帰省について聞いた調査では、帰省しないと答えた人が46.7%でした。義理の家族との時間や親戚へのお年玉を負担に感じているという声も一定数あります。
年末年始に誰とも話さないと不安になります。
同居していない家族や友人と直接会って話すことが全くないという人は9.7%います。年に一度この時期に連絡してみる相手を一人決めておくだけでも変わります。気持ちが沈むときは、孤独や孤立について相談できる公的な窓口を使って構いません。
孤独を感じている人はどれくらいいますか?
孤独感があると答えた人は全体で約4割です。「しばしばある・常にある」が4.5%、「時々ある」が13.7%、「たまにある」が19.5%でした。年齢別では30歳代から50歳代で高くなっています。
まとめ
年末年始に一人でいるのがこたえるのは、性格の問題でも、過ごし方が下手だからでもありません。
この数日には、誰かと食べる場面が社会全体で一気に増えることと、一人でいられる場所がまとめて閉まることが同時に起きます。
ふだん一人で平気に過ごせている人ほど、後者の影響を強く受けます。
つらさの正体が事情のほうにあると分かれば、手の打ちどころも見えてきます。
打てる手は、どれも当日ではなく年内にあります。
三が日に開いている場所を一つ確かめておく。
食事をどうするか決めておく。
連絡してみる相手を一人決めておく。
共食の頻度と孤独感に6倍以上の差があるという数字は、逆から読めば、一度でも誰かと食べる機会があることには意味があるということです。
そして、一人で過ごす人は年末で16.7%います。
孤独感があると答えた人は全体の約4割で、しかも働き盛りの30代から50代がいちばん高い。
街全体が家族で賑わっているように見えても、それは見えている風景であって、実態とは違います。
家族の輪の中にいる人が、義理の付き合いにうんざりしていることもあります。
一人の年末年始は珍しいことでも失敗でもありません。
そのうえで、しんどいと感じるなら早めに手を打つ。
この数日を無事に通過することが目的で、楽しまなければいけない決まりはどこにもありません。