乾杯のあいだは全員で話していたのに、料理が出そろうころには両隣が別々の話で盛り上がっていて、自分だけがグラスを見つめている。
職場の飲み会で毎回そうなると、原因は自分にあるのだろうかと考えてしまいますよね。
ところが、同時に会話できる人数には研究で示された上限があります。
そこを超えた席は必ず複数の輪に割れるので、余る人が出るのは仕組みのほうの話です。
この記事では、まずその仕組みを押さえたうえで、当日その場でできることと、次回どうするかまでを並べました。
性格を直しましょうという内容ではありません。
仕組みの話と、その中で選べる手の話です。
この記事の調査データと研究は公表されている原典を確認し、実施主体・時期・回答数を明記したうえで引用しています。
まずは、ポツンがいつ始まるのかから見ていきましょう。
飲み会でポツンになるのは中盤から始まる
孤立は最初から起きているわけではありません。
始まる時間帯がだいたい決まっています。
乾杯の直後は全員が同じ話をしていますが、料理と酒が回ったあたりで席が動き、そこから余る人が出ます。
会社の飲み会で孤立するという相談でも、「最初は何となく周りと雑談するけれど、お酒が入ると各々好きな席に移動してしまう」という書き方をされていました。
開始5分の問題ではなく、中盤以降の問題として語られています。
とくに3つ目はつらい瞬間です。
トイレから戻ったら自分の席に別の人が座っていて、しかもそこが盛り上がっている。
戻る場所を失って立ち尽くす、という話は珍しくありません。
つまりポツンは、その人の第一印象で決まっているのではなく、席の並びが崩れたあとに発生していることになります。
ここが分かると、対処のタイミングも見えてきます。
一度に会話できるのは自分を入れて4人まで
では、なぜ席が動いた瞬間に余る人が出るのでしょうか。
ここには研究で示された数字があります。
会話している集団の人数を数えると10人を超えることもありますが、「全員がその内容について発言している」状態に絞ると、人数は4まで落ちます。
進化心理学者のダンバーらが実際の場面で確かめた結果で、日本女子大学 心理学科の心理学コラムでも紹介されています。
つまり同時に会話できるのは、自分を入れて4人が限界だということです。
理由は認知能力にあります。
会話は、相手の発言を聞き取り、言外の意味を理解し、気持ちを推測し、それに合わせて発言を作り、タイミングを計り、相手の反応を見て修正する作業を同時進行でこなすものです。
参加人数が増えるほど、この処理は急激に重くなります。
8人のテーブルが4人と4人にきれいに割れるとは限りません。
3人と3人に割れて2人が宙に浮くこともあれば、5人と3人になって端が置き去りになることもあります。
大人数の飲み会でポツンになる人が出るのは、性格の巡り合わせではなく、席の人数が会話の上限を超えているからです。
60人規模の宴会なら、余る人はほぼ確実に何人か出ます。
自分がその一人になった夜があった、というだけの話でもあります。
気を遣う人ほど余ってしまうことがある
続いて、よく紹介される対策がなぜ効かないことがあるのかを見ていきます。
取り分け、お酌、聞き役、感謝を伝えること。これを何年も続けても孤立が解消しなかった例があります。
勤続20年を超える人が、話を振ってみたり聞き役に徹したり、出しゃばらない程度に取り分けとオーダー取りとビール注ぎまでやっていて、それでも気がつくと8人がけのテーブルに一人だった、と書いていました。
職場でのトラブルはなく、休憩時間には雑談もある人です。
これは対策が間違っているという話ではありません。
役割を持つ動き方には、余った時間を埋める効果が確かにあります。
ただし、それは会話の輪に入れてくれるものではないということです。
取り分けている人は、その場では全員と一言ずつ話せます。
ところがトングを置いた瞬間に、輪は元の4人に戻っています。
気を遣える人ほど動いてしまうので、動き終わったときに座る場所がない、ということが起こります。
噂話の輪がいちばん入りにくい
孤立している人に向けて「悪口や噂話にも少しは加わったほうが盛り上がる」という助言があります。
ここには落とし穴があります。
噂話をしているときの会話グループは、ふつうの会話よりさらに1人分小さくなることが確かめられています。
先ほどと同じダンバーらの研究です。
噂話は、その場にいない人物を思い浮かべ、いま話している相手とその人物の関係まで処理する必要があるため、事実上ひとり分の認知的負荷が余計にかかります。
実際に会話の内容ごとに集計を分けたところ、人数の減り幅はちょうど一人分でした。
つまり噂話で盛り上がっている輪は、この場でもっとも人数が少なく、もっとも新規参入を拒む輪だということです。
そこを狙って入っていこうとすれば、うまくいかないのが普通です。
外から見ると噂話の輪はいちばん盛り上がって見えるので、入れない自分に問題があるように感じます。
入りにくい輪を選んでしまっているだけ、という見方もできます。
座る位置で結果が変わる部分
仕組みの話が続いたので、ここからは実際に動かせるところを見ていきます。
最初に効くのは席です。
長いテーブルの真ん中は、話が両端に割れたときにどちらにも入れない位置になります。
10人以上のテーブルの中央に座ると、たいてい両端で話題が分かれ、両サイドが背を向けた状態で真ん中に取り残される、という声があります。
加わろうとしても、体の向きが自分に向いていないので入りにくくなります。
一方で、立食や大部屋では立ち位置の影響が指摘されています。
人の後ろに立つと相手の視界から消えてしまうため、話しかけられる回数そのものが減ります。
最後の項目は地味ですが効きます。
戻る場所さえ残っていれば、席を外すこと自体は自由に使える逃げ道になります。
位置で全部が決まるわけではありません。
ただ、真ん中に座って両端が割れるのを待つよりは、最初の数十秒で選べることが残っているということです。
ポツンになった夜にその場でできること
それでも輪から外れたときに、実際に何をするか。
ここは順番が大事です。
まず「輪に入り直す」ではなく、「余っている時間を持ちこたえる」ほうから手を打ちます。
会話に入ろうと焦るほど表情が固くなり、周囲からも声をかけにくくなります。
先に自分の時間を落ち着かせるほうが結果的に早く戻れます。
そのうえで、動くならこの2つです。
同じく余っている人に話しかけるのは、成功率がいちばん高い手です。
すでに閉じた4人の輪をこじ開けるのではなく、2人の新しい輪を作る動き方だからです。
相手も同じ状況なので断られません。
ここから3人、4人と増えて、気づけばそちらが盛り上がっていることもあります。
席を移動するときは、いったん立ってから動くのが自然です。
トイレや注文を口実にすれば、移動そのものが目立ちません。
飲み会を途中で帰ってもいいのか
打つ手を全部試しても居心地が戻らない夜はあります。
そのときの話です。
一次会に出ていれば、参加した人として数えられます。
会社の飲み会は、開始から2時間前後で一区切りがつく形が多くなっています。
そこまで在席していれば、会費も払っていますし、幹事の人数報告にも支障は出ません。
二次会は、行き先を決める段階でグループがすでに固まっています。
一次会で余っていた人が二次会でうまくいく可能性は低いので、ここは無理に残る場面ではありません。
我慢して最後までいることを選ぶ人もいます。
一次会はせいぜい2時間だから、と割り切る考え方です。
どちらでも構いません。
残る・帰るを自分で決めているかどうかで、同じ2時間の重さがかなり変わります。
飲み会でポツンだと職場での評価は下がるのか
気になるのはここだと思います。
飲み会での立ち回りと、仕事の評価は別に扱われるのが基本です。
飲み会には、そもそも参加する人の顔ぶれに偏りがあります。
20〜59歳の会社員300人への調査では、役職者の参加率が91.9%と高く出ていました。
同じ調査で、参加したくないと答えた人は50.7%、任意参加だが強制に近いと感じている人は36.3%です。
株式会社識学が2024年1月22日にインターネットで実施した調査による数字です。
評価する側ほど参加率が高く、残りやすいということです。
だからこそ、その場での盛り上がり方まで評価に持ち込まれると困るわけですが、実際に見られているのは普段の仕事のほうです。
もっとも、参加そのものを気にしている職場もあります。
欠席が続いたときにどう見られるかは、
-
-
飲み会来ない人の印象は悪い?同僚と上司で違う見え方と挽回策
飲み会来ない人の印象を、同僚から見た場合と上司から見た場合に分けて整理しました。実際の調査で分かった来ない理由の内訳と、印象を戻すためにできることまで解説します。
で整理しています。
職場で孤独を感じている人は増えている
最後に、自分だけの問題なのかという点です。
職場で孤独を感じた経験がある人は、2020年の27.1%から2025年には67.2%まで増えています。
Job総研が2025年5月9日から14日にかけて、就業中の20〜50代の男女576人にインターネットで聞いた調査です。
過去7年で最多という結果になっています。
同じ調査では、83.0%が仕事やメンタルへの影響を実感していると答えています。
孤独を減らすために必要なものとして挙がったのは、「気軽に会話できる対面の場」が28.1%でした。
数字だけ見ると、飲み会はその「対面の場」に当てはまりそうに見えます。
ところが年に数回の大人数の宴会は、会話できる人数の上限を大きく超えているので、この役目を果たしません。
孤独を埋める場として飲み会に期待していると、期待した分だけ落差が大きくなります。
ポツンになったのは、あなたの人望の総決算ではありません。
この5年で3人に2人が経験するようになったことの、たまたま今夜の一例です。
次の飲み会をどうするか
ここまでを踏まえて、次回の話です。
参加する・しないの二択にする必要はありません。
飲み会でポツンになる人が取れる道は、実際には3つあります。
3つ目を選ぶ人は少なくありません。
会社の大人数の飲み会には出ないと決めて、気心の知れた相手とだけ飲むようにした、という声もあります。
4人までなら全員が話に入れるという上限は、逆に言えば少人数の場では孤立が起きにくいということでもあります。
出ないことを選んだ場合の伝え方や、毎回断ったときにどう見られるかは、
-
-
飲み会に行かないのは賢い?断ったときの見られ方と角が立たない伝え方
飲み会 行かないのは賢いのかを、実際の調査データと周囲の受け取り方から整理しました。毎回断る場合の考え方、二次会だけ断る方法、欠席時の寸志、角が立たない伝え方まで解説します。
にまとめています。
1年目でこの判断に迷っている場合は、
-
-
忘年会行きたくない新人へ!断っていい理由と幹事を頼まれたとき
忘年会 行きたくない新人が知っておきたいことを整理しました。断っていいのかという判断、上司がいる場と同期の場で変わる数字、角が立たない断り方、幹事を頼まれたときの対応まで解説します。
のほうが近い内容です。
飲み会でポツンになることに関するよくある質問
飲み会でポツンになるのはなぜですか?
全員が発言できる会話グループは4人が上限だという研究結果があります。大人数の席は必ず複数の輪に割れるため、割れ方によって輪に入りきらない人が出ます。人数の問題であって、性格だけの問題ではありません。
取り分けやお酌をすれば孤立を防げますか?
手が空く時間を減らす効果はありますが、輪の人数の上限を広げるものではありません。役割を続けても孤立が解消しなかった例もあるので、これだけに頼らないほうが消耗しません。
悪口や噂話の輪に入ったほうがいいですか?
おすすめしません。噂話をしている輪は通常の会話よりさらに1人分小さくなることが確かめられています。もっとも人数が少なく、もっとも入りにくい輪を狙うことになります。
飲み会で席を移動してもいいですか?
問題ありません。ただし立ち上がるきっかけを作るほうが自然です。トイレや注文を口実にして、戻るときに別の輪の空席に座る流れがおすすめです。
会話に入れないときは何をしていればいいですか?
先に料理と飲み物へ集中して時間を持ちこたえ、そのうえで同じように余っている人に声をかけてください。閉じた輪に入るより、新しく2人の輪を作るほうが成功しやすくなります。
飲み会を途中で帰ってもいいですか?
一次会に出ていれば参加した扱いになります。会計や締めの挨拶が終わったタイミングで、幹事と同じテーブルの人に一声かけて出れば角が立ちません。
飲み会でぼっちだと職場での評価は下がりますか?
飲み会での立ち回りと仕事の評価は別に扱われるのが基本です。ただし参加率には偏りがあり、20〜59歳の会社員300人への調査では役職者の参加率が91.9%でした。
飲み会が苦手なのは自分の性格の問題ですか?
職場で孤独を感じた経験がある人は2025年で67.2%と、5年前の27.1%から大きく増えています。大人数の場で会話に入れないこと自体は、多くの人が経験しています。
まとめ
飲み会でポツンになる夜には、たいてい共通の流れがありました。
乾杯のあいだは全員で話しているのに、席が動いた瞬間に輪が割れて、そこで余る人が出ます。
全員が発言できる会話は自分を入れて4人までという上限があるので、大人数の席で輪が割れるのは避けようのないことでした。
だから、取り分けもお酌も聞き役も、効かない場面があります。
それらは手が空く時間を埋めるものであって、輪の人数を広げるものではないからです。
噂話の輪はさらに1人分小さくなるので、いちばん盛り上がって見える輪がいちばん入れない輪だった、ということも起こります。
そのうえで残っている手は、思ったより具体的です。
長テーブルの真ん中を避けて端寄りに座る。
席を外すときは上着を置いていく。
輪に戻るなら、閉じた4人ではなく、同じように余っている人に声をかけて2人から始める。
一次会で切り上げて、二次会の組み分けには加わらない。
ポツンになったことは、職場での自分の値打ちを表す数字ではありません。
職場で孤独を感じる人は5年で27.1%から67.2%まで増えていて、いまや珍しいことではなくなりました。
それでも埋まらないなら、大人数の宴会に期待するのをやめて、4人までの場に付き合いを移すという選び方が残っています。